2021年10月8日金曜日

赤ちゃんマントがひるがえる町 ~”Porte--bebe” のこと

 2019年3月にワガドゥグの町に来て、いちばんの驚きは、道路にバイクがあふれているということでした。しかも、感心することに、道路の両端にバイク通行の列が数列できて、車の運転手たちもバイクの運転手たちも理路整然と運転しているのです。
そのうちに、ヘルメット着用の運転手を全く見かけないということに驚き、女性たちも赤ちゃんをおんぶしたり、子どもたちを後ろに載せて平然と運転していることにも驚きました。

そして、きれいな色の布マントを翻して走る女性たちの姿が目に留まり始めたのです。




背中の中央部分にアップリケや刺しゅうやフリルなどが付いて膨らんでいます。
女性たちは皆、その布を肩の片方に載せて胸のところで結び付けているようです。
そうなのです。
このマントは、赤ちゃんを保護する”Porte-bebe"と呼ばれるものでした。

写真を撮られることを嫌うアフリカの人たちの目を避けて、車の中から撮り溜めたこの美しい、愛情の象徴のようなマントたちの写真です。






 
自転車の女性だって、マントをひるがえして走行中。
クリーム色のporte-bebeの背中の真ん中にはフリルが付いています。わたしが小さいころ、少年たちに人気のあった遊び、「ちゃんばらごっこ」のさむらい?の恰好をほうふつとさせます。
このマダムのマントは白。
背中の中央には、毛糸のモチーフ編みのような四角い厚手布が付いています。これだと、赤ちゃんの体は衝撃に対してもしっかり保護されるでしょう。


このマダムの羽織るピンクのporte-bebeには背中の広範囲にフリルが付いておしゃれです。

porte-bebeは出産のお祝いにもらうのだそうです。
女の赤ちゃんが生まれたら、ピンク色やワイン色が選ばれ、男の赤ちゃんであれば、淡い青色やミントグリーン色が選ばれると言います。
布地サイズは、長方形でだいたい1.5メートルくらい。
ほとんどのporte-bebeの素材は、化学繊維入りのものだそうです。単純な理由で、綿100%のもののほうが赤ちゃんには良いのだろうけど、値段が張るからだということです。
赤ちゃん用品店で2500フランセーファー。綿100%だと1万フランセーファーもするからなかなか買えないと聞きました。


出産祝いでもらえるporte-bebeを、ワガドゥグの母親はだいたい5,6枚は持っていると聞きました。
中央アフリカ共和国のバンギでもコンゴのキンシャサでも、こういうおしゃれなporte-bebeは決して見かけませんでした。
ただ、アフリカンプリントの2ヤード(1.8メートル)で、赤ん坊の頭だけを出して、それ以外をくるりんと包んだ負ぶい方をするだけでした。
ワガドゥグでも、今でもそういった負ぶい方をする母親を見かけます。
こんな負ぶい方です。



もちろん、今もporte-bebeの下の赤ちゃんは、アフリカンプリントの布地で、頭だけ出して両足は母親の左右脇に固定されてしっかり包まれた状態で、保護マントで被っているそうです。

この赤ちゃん保護用のマントは、日差しが強いうえに乾季の埃舞うブルキナファソでは昔から存在したということです。
⓵赤ん坊を太陽の日差しから守る。
②風から守る(ここの人たちは風はいろいろなものを運んでくるといって忌み嫌います)。
③乾季には町中に埃が舞い(サハラ砂漠からの砂混じりの空気で町じゅうがかすんで見えるほど!)その汚れから守る。
さらには、布の下で、赤ん坊は子宮の中にいるような安らかな気持ちになる、ということも聞きました。
最初は、アフリカンプリントの布地を使ってマントのようにまとって赤ちゃんを保護していた布地だったが、だんだん、進化して母親たちがおしゃれを楽しむようになったと夫のプロジェクトの女性事務員は説明してくれました。
今では、その布地が改良されて、きれいな色の無地布に刺しゅうやアップリケやフリルなど工夫を凝らして楽しむようになり、赤ちゃん誕生祝いの人気のプレゼントとなっているのでしょう。
わたしには、このporte-bebeは、赤ん坊を持つ母親の「幸せの象徴」のように思えるのでした。


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