2019年8月9日金曜日

正午を過ぎたらボンソワール

ワガドゥグの町に夜が来る

8月に入って、驚くような激しい雨は降りませんが、朝晩は重い雲が空を覆い、就寝時や午前中はエアコンを付けないで過ごせます。
日没は午後6時20分ちょっと過ぎです。

今日は、ワガドゥグの独特のあいさつについて書き留めておきたいと思います。

日本だったら、午前中までは「おはようございます」、正午近くになると「こんにちは」、夕暮れ時から「こんばんは」というあいさつを交わします。

ところが、ワガドゥグの皆さんは、正午すぎた途端に「Bon soir~ボンソワール」と言うのです。
それが不思議で不思議でしかたありませんでした。

フランスでもバンギでもキンシャサでも、「Bon soir」は夕暮れ近くなってからのあいさつ~こんばんは~でしたから。
”soir”の言葉を辞書であらためて調べてみると・・・。
夕方、夕暮れ。日没前後から真夜中までを漠然とさす・・・となっています。

でも、ワガドゥグの人たちは正午を過ぎた途端に「Bon soir」です。
まだ、お日様は高いよー!と言いたくなります。

何で「Bon soir」なのよ。
と、何人かの人に訊いてみました。
博学の我が家の運転手さんと夫の秘書の女性は、きっぱり言いました。
(ふたりともモシ族の人です。)
わたしたちの言葉、モレ語には一日のうちで5つのあいさつの言葉を持っているのです、と。

Ne y yibeogo (ネ・イビョオゴ)・・・朝のあいさつ

Ne y sonre (ネ・ソンレ)…午前9時頃から11時頃のあいさつ

Ne y wininga (ネ・ウェンニガ)・・・午前11時頃から午後2時頃までのあいさつ

Ne y zaabre  (ネ・ザァアブレ)・・・午後2時頃から夕方6時頃までのあいさつ

Ne y yuungo (ネ・イヨンゴ)・・・夜7時頃からのあいさつ

”wininga”、”zaabre”、”yuungo”と区別して使われる言葉がフランス語にはないので、だいたい13時以降には仏語の「soir」を代用しているのだと二人は説明してくれました。

それに加えて、フランス語の先生(かのじょもモシ族)は、アフリカの生活には時計がなかったから、ずいぶん長い間、太陽の位置で時間の流れを測っていた。太陽がいちばん高いところに来て、それを過ぎたらもう一日の半分が過ぎた、と考えていたのでしょう、ということです。「太陽の一番高い位置」を基準にモシ族(他の民族も?)の人たちは暮らしていたのかなと考えると興味深いです。
ちなみに、ブルキナファソのもう一つの部族、デュラ族(ボボ・デュラッソというこの国第2の都市の人々)の言葉であるデュラ語には4つのあいさつの言葉があるそうです。

午後のことをフランス語では、「apres-midi」だから、午後のあいさつは本来なら、「Bon apres-midi」になるのでしょうが、フランス本国では違った意味になって、「良い午後を(お過ごしください)」と言う、別れ言葉のニュアンスを持つようになります。

ちなみに、フランス本国でもバンギでもキンシャサでも、よく別れ際に「Bonne journee」、「Bon apres-midi」、「Bonne soiree」と言う言葉を交わしていました。
それぞれに、良い一日を、良い午後を、良い晩を、という意味です、というより、時間帯によって使い分ける「さよなら」と言う言葉ですね。
でも、ここ、ワガドゥグではこの別れのあいさつは一般的ではないかも。スーパーでも「Bonne journee」と声を掛けられたことはないと思います。
「Bon nuit」、これはおやすみなさいというあいさつですが、これもあまり聞いたことがないなあ。(というか、夜の外出は控えるように言われているので、聞く機会がないだけかもしれませんが。)
我がアパートの門番の人たちは、夜に帰宅しても「Bon nuit」とは言いません。

その代わりに、本当に良く耳にするワガ特有(?)の言葉があります!

「Bonne ariivee」

直訳すると良いご帰還を、でしょうか。普通に言いなおせば、おかえりなさい、ですね。
外出から戻ると、必ず、門番のお兄さんも我が家のコックさんも、そう言って迎え入れてくれます。
それに加えて、いらっしゃい、という意味も入っていると夫は言います。
(毎朝、夫が事務所に到着すると、先に着席しているスタッフから、「Bonne ariivee」とあいさつされるのだそうです。なるほど。これは、良い到着を、という感じで使われるのでしょう。いらっしゃい、という意味合いになります。)

「ボン・アリベー」
おつかれさま~♪、みたいな気持ちも入った、ほっこりしたこの言葉の響きが、わたしには心地良く感じられます。

カナダでは、また違ったフランス語のあいさつがあると聞きました。
フランス語圏の中でも、その土地、その土地で育まれた独特の言い回しがあるのでしょう。

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